上咽頭炎ってなんだ?

  • ずっと喉の奥がひっかかった感じがするのはなぜだろう。
  • たんが喉に絶えず落ちてきて不快だ。
  • どこの病院に行っても解決しないままだ。
  • ずっと不快なままなのでイライラする。
  •  このような思いや考えを持っておられる方は多いと思います。私もそのうちの一人です。

    1.本記事の内容とわかっていただけること

  • 上咽頭炎という病気が存在している
  • お医者さんや薬剤師さんが意外と知らないということ
  • 不快な気持ちを引き起こす病気であること
  • 2.記事の根拠
     執筆:ちゃぬまるです。
     2000年頃から2015年の8月まで上咽頭炎という病気が存在していることが分からないまま過ごしていたので、約15年悩み続けた折り紙付きの苦労者と自称しています(笑)。本当は笑えませんが...。
     何の病気にかかっているのか分からず、どの診療科を尋ねたら良いか分からず、どう症状を伝えたら良いか分からずで、最終的に集めた病院の診察カードは10枚を軽く超えます(笑)。その間何も分からずでモヤモヤした日々をよく過ごせたなと過去の病気に耐えた自分を褒めてあげたくなります。
     今は病状も分かって治療法も分かって回復していますが、世の中には上咽頭炎という病気があることすら知らない人もいらっしゃって、解決策も分からないまま”ストレスでしょう”とか”気にしすぎでしょう”で済まされて今まで過ごされてきた方もおられると思いますが、この記事をきっかけに解決の一つにでもなれば幸いです。

     病気も不安やストレスを引き起こす要因です。
     病気の要因と解決策を知って、”ここなご”な生活を目指しましょう!

    【1】上咽頭炎とはなにか?

    疑問

    1.上咽頭炎とはなにか

     まずは上咽頭という場所が体のどこにあるかです。
     下手な絵で申し訳ありませんが、下記絵を見てください。
    上咽頭
     ”喉(のど)”はみなさん分かるかと思いますが、口をあけて奥の方にあるところですよね。食べものや飲みものが通ったり、空気が通ったりするところです。
     実はのどは大きく分けて3つに分かれていて、みなさん良くご存じの口を開けて奥にある部分を”中咽頭”、その更に下の食道に続く部分を”下咽頭”と呼び、中咽頭の更に上には”上咽頭”という部位があるのです。(絵でいうと赤字、赤丸のところ)
     部位的には『なんだ、鼻の奥ではないか』と思われても仕方がないですが、ここも”のど”なんです。

     この上咽頭に炎症が起きている状況を『上咽頭炎』と呼びます。
     この炎症には『急性上咽頭炎』『慢性上咽頭炎』の二種類があって、今回の記事で取り上げたいのは『慢性上咽頭炎』です。

     慢性上咽頭炎になると起こる症状としては以下のとおりです。

  • のどの異常感
  • 鼻の奥からのどへ痰(たん)が流れ落ちる(後鼻漏)
  • 鼻のつまりと軽い鼻水
  • 話し声のかすれ、もしくは鼻声
  • 鼻奥の乾燥感
  • 肩こり
  • 目のかすみ
  • 胃部の不快感(きりきり痛むわけではない)
  • 便通の不整(下痢と便秘)
  • 焦燥感(あせり)
  • 憂鬱(ゆううつ)
  • 怒りやすい
  • などです。

     これらはあくまで一例で個人差があるのですが、症状として列挙したうち前半は鼻やのどについての症状ですが、後半はなんだか鼻やのどとは関係がないものばかりですね。慢性上咽頭炎になると、鼻やのど以外の体へも影響を及ぼしています。

     ※便秘については別記事『ストレスによる便秘とさよならする予防法を3つの視点でとらえる』で紹介していますので参照ください。

    ストレスによる便秘とさよならする予防法を3つの視点でとらえる

    2.上咽頭で何が起こっているのか

     先ほどの項目で上咽頭の位置と主な症状について紹介しました。
     この上咽頭でいったい何が起こっているのでしょうか?
     ここからは少し難しい話になりますので、上咽頭炎について詳しく知りたい方はそのまま読み進めていただいて、仕組みについてまではという人は読み飛ばして次の項目へ行っていただいても構いません。

     上咽頭は鼻のあなから入った空気が鼻腔を抜けて方向を下向きに変える場所で、空気が滞留しやすく常にじめじめしていて細菌やウイルスに感染しやすい場所です。上咽頭は”繊毛上皮細胞”があり、ほこりや細菌などの外の異物を押し流して痰として排出する働きを持っています。この繊毛上皮は鼻腔や気管などにもありますが、上咽頭の繊毛上皮には体の免疫システムを担うリンパ球が入り込んでいます。
     免疫システムを担うのは”白血球”であり、白血球は、”顆粒球”、”リンパ球”、”マクロファージ”から構成されています。
     リンパ球は”Tリンパ球”、”Bリンパ球”、”NK(ナチュラルキラー)細胞”があり、ウイルスやがん細胞などをころす専門集団としての役割があります。Tリンパ球には”ヘルパーTリンパ球”と”サイトトキシックTリンパ球”があり、このうちサイトトキシックTリンパ球は標的であるウイルスなどに接着して直接相手を破壊し、Bリンパ球は免疫グロブリン(抗体)というたんぱく質の接着弾をつくり、それを体内に放出してウイルスなどの病原体を攻撃します。
     マクロファージはウイルスや細菌などの微生物だけでなく花粉やほこりなどの体内に入ってくるあらゆる異物、役目を終えて死んだ仲間の細胞の死骸も食べてしまう細胞です。細菌やウイルス、花粉などの異物が体内に侵入したことを免疫の司令官であるヘルパーTリンパ球に伝える役割ももっています。
     以上のように免疫システムにおける白血球それぞれの役割をかいつまんで説明しましたが、それらが上咽頭でどのように炎症を引き起こしているかを次に説明します。

     空気とともに上咽頭に侵入してきたウイルスや細菌が上咽頭の繊毛上皮に付着すると、私たちの体の免疫システムが動き出します。最初に敵の侵入を察知した繊毛上皮細胞が、マクロファージや好中球にサインを出して攻撃を指令します。指令を受けたマクロファージと好中球は動き出してウイルスや細菌を攻撃し始めます。
     また、繊毛上皮の攻撃指令を受けてリンパ球の仲間、ヘルパーTリンパ球も動き出します。ヘルパーTリンパ球には攻撃の司令官的役割があり、ウイルスをやっつけるようにサイトトキシックTリンパ球に攻撃の指令を出すと同時に、Bリンパ球にも指令を出し、ウイルスを攻撃するための接着弾(抗体)であるグロブリン(IgAやIgG)を作らせて攻撃させます。
     上咽頭ではこうした戦いが繰り広げられており、細菌やウイルスなどの抗原の侵入を防いでいます。これが上咽頭における炎症です。
     この戦いの中で死骸となったものが鼻水となったり、痰となって喉の下に落ちてきて口から出したりします。

    3.自律神経と上咽頭の関係性

     慢性上咽頭炎の主な症状については前述したとおりですが、肩こりや便通の不整、焦燥感などは現在の医学では『自律神経失調症』とひとくくりにされて呼ばれており、病院に行って様々な検査をしても異常が見つからず、多くの場合は”精神安定剤”や”抗うつ薬”を投与されるくらいです。ただ、根本的な解決がされているわけではないので不快症状を抱えて生活をするということが実際には少なくありません。私もそうでした。色々な病院を回って検査してもらっても『気のせいでしょう』とか『特に異常はないですけどね』と言われて効きもしない薬を処方されて終いです。
     上咽頭炎と自律神経の関係性については1960年代に耳鼻科医として活躍されていた堀口氏などによって明らかにされていました。

     極度のストレスや働きすぎなどによって交感神経優位の状態が続いて自律神経のバランスが崩れると免疫力の低下が起こりますが、これは直ちに上咽頭にある免疫システムにも影響を及ぼします。上咽頭にある繊毛上皮は常に活性化している状態で、活性化した繊毛上皮細胞は何かのきっかけがあれば戦闘準備状態からすぐに戦闘状態に移ることができます。すなわちマクロファージやTリンパ球に指令を出せる状態になるということです。
     ウイルスや細菌が侵入してきたわけではなく、精神的な影響だけで上咽頭炎が起こりえるのです。そして炎症が一度起きると、好戦的なリンパ球によって戦闘が活発化して炎症が長期化します。炎症が長引くと自律神経の乱れにも影響を与え、様々な不快症状がでて精神的な不調をうったえるという悪循環を引き起こします。
     これは上咽頭の位置が自律神経と内分泌系をつかさどる『視床下部』に近い部位にあるため影響を受けやすいと言えます。

    【2】診断方法と治療について

    医療道具

    1.苦痛を伴うが簡単な診断方法がある

     急性上咽頭炎の場合はファイバースコープなどの検査によって症状がわかる場合もありますが、当記事で挙げている慢性上咽頭炎の場合はファイバースコープによる検査では見つけてもらいにくいです。軽度の赤みがみられるだけで、慢性上咽頭炎を知らない人が覗いたら特に異常はないと判断されてしまうからです。
     慢性上咽頭炎の判断は医療用綿棒に塩化亜鉛を塗布し、それで上咽頭を軽くこするのです。病院によって違うかもしれませんが、私が受けた病院では、鼻から細い綿棒で突っ込んでこすり、次に口を大きくあけて上咽頭に向けて綿棒を突っ込んでこするというやり方です。
     上咽頭に炎症がある場合は、綿棒の先に血がつきますし、何よりこすった際に痛みが走ります。これは炎症のレベルに比例していると思います。自覚症状として炎症がひどいだろうなと思って受診したら、案の定痛みがひどかったりします。
     この医療行為自体はだいたい数分程度です。最初に受ける際は勇気がいるのと痛みがあるので怖いのですが...。

    2.診断方法がそのまま治療となる?

     さきほど診断方法について紹介してきました。では治療方法は何かと言いますと、『診断方法と同じ』です。
     医療用綿棒に塩化亜鉛を塗布したもので上咽頭の患部をこするというものでしたが、それがそのまま治療になるということです。どういうことかと言いますと、塩化亜鉛の作用により炎症を焼くということです。塩化亜鉛は収れん材であるためです。収れん剤とは皮膚または粘膜組織のタンパク質を沈殿させて被膜を形成し、細胞膜の透過性を減少させる薬のことです。下痢や炎症、潰瘍、傷の治療に用いたりします。収れん剤としては酸化亜鉛やタンニン酸などがあります。
     ちなみに、炎症の度合いがおさまってくると塩化亜鉛を塗布しての治療時の痛みと出血量が減ってきます。私も上咽頭の腫れがひどいなあと思ったときに治療をうけると大抵ひどい痛みと出血が見られて医者からも『今回はちょっとひどいですね』と言われたりもしますが、何度か治療をうけて症状が落ち着いてくると痛みと出血量が減ってくるのを体験済みです。

    3.予防するにはどうしたらよいか

     色々と予防方法はありますが、共通していえることは上咽頭を自分自身でいたわってあげるということです。

  • 禁煙する
  • きれいな空気を吸うことを心掛ける
  • 鼻うがいを習慣づける
  • 首周りを冷やさない
  • 口呼吸をやめる
  • ストレスのたまらない生き方をする
  • 免疫力を高める食事をする
  • これらは大事なことですので、理解していただくと同時にぜひとも実践していただきたいと思います。
     ※鼻うがいについては別記事『インフルエンザやカゼは鼻うがいで予防しよう!痛くないですよ!』で紹介していますので参照ください。

    インフルエンザやカゼは鼻うがいで予防しよう!痛くないですよ!

    【3】上咽頭炎患者として知るべき3つの重要なこと

    シャボン玉

    1.上咽頭炎は周知されていない

     結論からいいます。上咽頭炎を知らない医者や薬剤師は結構いらっしゃいます
     これはどういうことかと言いますと、慢性上咽頭炎を発症している状態で上記病院を受診しても診断してもらえない可能性があるということです。耳鼻咽喉科の教科書に載っていないうえ、大学の授業にも出てこないということです。
     1970年代には前述の堀口氏によって日本国内において慢性上咽頭炎についての学術発表がされていますが、日本国内で埋没して国際的に発表された形跡がないということです。
     埋没した理由としては3つ挙げられます。
     1.診療報酬が低いことです。
     耳鼻科で受ける吸入があると思いますが、あれと同じ診療報酬点数ですので、患者1人あたりに塩化亜鉛の塗布行為をしただけだと約120円くらいの医療費ということになります。実際に私も何度も受診していますが、病院代だけだと約500円程度で済んでいます。ただ、報酬点数が低いということは、病院経営側からみると、仮に慢性上咽頭炎の患者ばかりだと経営が成り立たないと考えられてしまうということです。
     2.治療に伴う痛みがあるということです。
     綿棒を鼻の奥やのどの奥へ突っ込むという行為自体が患者にとって苦しいですし、そこへ塩化亜鉛を塗布された直後に感じる痛みです。『〇〇耳鼻科に行ったらよく診てくれるし、すぐ治る』と広まるなら良いですが、『〇〇耳鼻科に行ったら痛い治療をされる』と言われると開業医にとってはデメリットになってしまいます。開業医として塩化亜鉛を塗布する治療行為を取り入れるかどうか悩みどころといえます。
     3.医師たちの間の猜疑心によって考え方が広まらなかった
     堀口氏が当時国内で発表した際に、上咽頭炎の治療によって炎症の改善だけでなく、糖尿病や膠原病などあらゆる難病に効くと報告されたため、かえって医師たちの間で猜疑心を持たれてしまったということです。

     実際に私が感じた体験を少し述べますが、2000年以降に門をたたいた耳鼻科は7院あります。そのうち上咽頭炎について認識していたのは2院だけでした。さらに塩化亜鉛を塗布してくれる病院は1院でした。薬剤師も同様で、薬を受け取る際に『どういった症状で受診されたのですか?』と聞かれることがあったのですが、その際に『上咽頭炎』という病名を出してもピンと来ていないようで認識してもらえませんでした。さらには生命保険に加入する際に既往症があれば報告する義務があるのですが、上咽頭炎のことを保険の担当者に伝えてもやはりピンと来ていませんでした。さらには保険の約款とかで調べてもらっても分かってもらえないという状況でした。

    2.上咽頭を大事にすること

     ここまで当記事を読んでいただいて分かっていただけると思いますが、上咽頭は特に大事にしていただきたいです。私は病気のデパートだと思っているのですが、上咽頭炎を発症すると鼻やのどに色々な症状が出るのは当たり前で、それ以外の体の部位へも悪影響が出ますので、できれば上咽頭炎にはならない方が良いです。
     また、頭の中心部あたりが痛みを伴っているわけですから痛みや鼻水やたんなどの呼吸系統的な苦しさだけでなく、自律神経の乱れからの精神的なうつ状態も引き起こしますから色々と大変です。

    3.病巣管理の考えを持つ

     現代の医療は専門分化がどんどんと進んでいる時代です。実際に私の妻が肩の痛みで整形外科の診察を受けた際、医者によって専門分野があるということで、得意分野でなかった際には『専門外なのではっきりとは申し上げられません』と回避されることが多かったと言います。医者としていろいろな領域に手を出すよりも得意分野を専門的に伸ばした方が効率がよいという考え方です。
     ただ、体はすべてつながっていますので、体のどこか一部だけが病気になっていって他の部位は関係ないということは本来はありません。上咽頭炎ひとつとっても、上咽頭が炎症を起こした場合、体のあちこちに不調を引き起こすということは分かっていただけたかと思いますので、『木を見て森をみる』という考え方であってほしいと思います。
     これは病巣管理という考え方で、この考え方を持っている病院というのはまだまだ少ないです。上咽頭を治すという病院自体も少ないですが探せば必ずあると思いますので、『自分は上咽頭炎かもしれない』と思われた方はぜひとも治療をしてくれる病院を訪ねてみてください。

     病院については『上咽頭炎を治療してくれるお医者さん(病院)を紹介していく』の記事で紹介していますので参考にしてみてください。

    上咽頭炎を治療してくれる病院の一覧があれば助かるよね!

     『木を見て森を見る治療』については『喘息の治療はそれだけで良いの!?上咽頭炎との関係性を紐解く』の記事で紹介していますので参考にしてみてください。

    喘息の治療はそれだけで良いの!?上咽頭炎との関係性を紐解く

     この記事で紹介してきた上咽頭炎については下記の本がおすすめです。
     私が通っている耳鼻科にも置いてありました。一度読んで見られると、体はつながっているんだねということが改めて理解できるかと思います。

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